2010年2月9日火曜日

小さな生命がそこに在った

冬を目の前にした晩秋の或る日、私たちはだだっぴろい野っ原に立った。木漏れ日が眩しいくらい降り注ぐ中、あちらをふらり、こちらをふらり。黒い服を着た彼女はとても小柄で細く、足もとても小さかった。
でも彼女の足は、彼女のそのかわいい風貌からは想像がつかないくらい力強く逞しい表情をしており。裸足がとても似合う足だった。

歩くほどに足は汚れ。それでも私たちは歩みを止めなかった。気づけば野っ原を二周りほどは歩いただろうか。

ふと、彼女の立った、その場所を見ると、小さな小さな樹の芽があり。私たちは息をのむ。こんな季節に新芽が出ている。私たちはその芽をじっと見つめる。

何処からやってきたんだろうね。
ねぇまだ、木の実の殻が根元に残ってるよ。
うん、まだ残ってる。ここから根を伸ばしてるんだろうか。
きっとまだまだ、小さな小さな根なんだろうね。
うん。

私たちはじっとして動かず、ただその芽を見つめていた。
生命がそこに、在った。