2010年3月16日火曜日

ふたり---輪郭~樹映より07

やがて。
雨粒が、途切れた。
風はまだまだ荒れ狂っていたが、それでもずいぶん穏やかになった。
私たちは、そろそろ撮影が終わるということを、知った。

見上げた空にはまだ、雲が一面広がっていたけれども。
あの空の向こうには間違いなく、太陽が在ることを、私たちは知っていた。
雲が割れるのを、今か今かと待つ、太陽が在ることを。

あの日。
私たちは一瞬を共にした。
それぞれの立ち位置でもって、ファインダーのこちら側と向こう側とで対峙した。
もし今この瞬間、何も知らない人が私たちを見つけたなら。遭難者とでも思うのではなかろうかというほど、私たちはくたくたになって、どろどろになっていた。
でも。

清々しかった。
こんな雨雲も、風雨も、まるで木っ端微塵になってしまいそうなほど、清々しかった。

あれからどのくらい時間が経つだろう。
今ふたりはどうしているだろう。
私は知らない。でも。

あの瞬間の、私たちが、ここに、在る。