2010年6月6日日曜日

三つ編み

私はいつの頃からか髪の毛を伸ばしていた。でも何故だろう。母に髪を結ってもらった記憶は、殆どない。

私の母も小さい頃から髪が長く、いつでも二つに分けて三つ編みにしていたのだという。それは腰に届くほどの長さで、クラスの誰よりも、長かったとよく母自身が言っていた。ちょっとでも髪を切ると、母の父親は機嫌が悪くなり、二、三日口をきいてくれなくなるほどだったという。

うまく言えないが。私はそんな母に似たかった。似たいが為に、髪を伸ばした。髪を伸ばして、同じように三つ編みにして、少しでも母に似ていると、誰かに言われたかった。
私は言ってみれば、みそっかすだった。
いつでも家族の輪から外れていた。だから。
だから、せめてそのくらいでも似て、あぁやっぱり母の娘なのねぇと、認められたかった。誰かに。

結局それは叶うことなく年は過ぎ。私はいつのまにか娘を持つ頃になっていた。
娘は、たいてい自分で後ろに一つに髪の毛を結わく。そうしてたまに、「ママ、今日は髪の毛三つ編みにして」だとか「二つに結って」と頼んでくる。
娘の髪はまだ幼い髪の毛で。さらさらさらさらと流れ、結うには柔らかすぎるほどで。だから私は気をつけながら、髪を櫛で梳き、結わく。

そうして娘の三つ編み姿を見る度思う。
三つ編みなんかにしなくたって、あなたは私の娘だわ、と。