2010年6月24日木曜日

「砂の歌」

蜘蛛のように蟻が糸をもって
私の手に絡み付いてくる

払っても払っても糸は切れず
蟻はその糸を伝って再び私の手に掴まろうとし、

私は慌ててそれを薙ぎ払い、
何度も薙ぎ払い、見えない糸の在り処を探している

いつから蟻が糸を持つようになったのか
誰か知りませんか
いつから蟻が人の手を餌にするようになったのか
誰か知りませんか

いつか蟻地獄に人が滑り落ちるなんていう光景が
目の前に繰り広げられるのかもしれない

そうやって
思ってもみなかった光景が
思ってもみないところで在り得、
私たちの世界は徐々に徐々に
崩れてゆく

誰の手を借りることもなく
ただ
崩れてゆく
しゃらしゃらと
手のひらから滑り落ちてゆく砂のように
しゃらしゃらと
崩れてゆく

今夜もあの砂山ではきっと
砂の歌が歌われる
しゃわわしゃわわ
しゃららしゃらら
浸食されゆくばかりの砂浜が
声なき悲鳴を上げて
しゃわわしゃらら
しゃわわしゃらら

そうやって崩れ行く世界
もう誰も
止めようは ない