2010年7月13日火曜日

「僕らは 2」

たとえば今

この世は灰色だ

と断言してしまえば
僕を取り囲む世界は一瞬にして
まさに灰色になる

空にいくら太陽が煌々と
輝いていようと、
灰色は灰色だ
雲一つない青空のもと
そよ風がたおやかに流れ
この頬を撫でてゆこうと

君が今日は晴天で
どれほど気持ちのいい一日かを
幾千もの言葉を使って僕に
説いたとしても

僕が僕にそう断言した
それだけで僕の世界は灰色になる

そんな、

言葉はひどく傲慢で、
あまりに頼りなく、

僕らは

言葉によって産まれ、言葉によって生き、そして
言葉によって死せしめられる
言葉の海に放り出され言葉の海を漂流し
いつ溺れるか知れない僕らは、そう、
言葉によって生かされ、そして
言葉によって殺される

君の蒼色が 僕の蒼色とは限らない
僕の真実が 君の真実とは限らない
今この場所に立つ君が見上げる空は蒼くても
今その隣に立つ僕の見上げる空は黒い

それが言葉だ

どうしようもなく曖昧過ぎる
言葉でもってしか交われない僕たちは
それでも
曖昧の中からせめてもの慰めを見つけては縋り、
その手とこの手をつなごうとする
その掌の中にはもしかしたら
この心臓を抉るために用意された短刀が
握られているかもしれないというのに

それでも

言葉によって産まれ、言葉によって生き、そして
言葉によって殺される僕たちはそれでも
言葉を操りながら言葉に操られ、
言葉に操られながら自分を手繰り、世界を手繰り、
そうして
今日を生きていく
今僕のこの手で握ろうとする君の掌の中に
刃が隠されていないことを 信じながら