2010年8月10日火曜日

虚影(4)


度重なるパニック、悪夢、幻聴、幻覚。四六時中やってくる震え、吐き気、眩暈。様々なPTSDの症状が私たちを襲った。
あまりの幻聴に、自分はもう気が狂ったんじゃなかろうかと、絶叫したくなることが多々あった。でも、そんなときでさえ声は出ないのだ。私たちの絶叫は、虚しく空を切るだけに終わる。

大量に薬を飲み、死んでしまおうとしたこともあった。思い切り腕を切り刻んで、水に浸けてそのまま寝入ることもあった。何とかして死のうと、電車のホーム、ひたすらそのタイミングを計っていたこともあった。
でも。
死ねない。

死ねないことがこんなにも苦しいことだなんて。誰が思ってみただろう。自分で生と死を選ぶことさえできない現実に、私たちはのた打ち回った。
切り刻んだ腕は、もう縫うこともできないくらいぼろぼろになっていたというのに。それでも私たちは、腕を切ることで何とか、自分の意識を保とうとしていた。