2010年9月7日火曜日

気配

写真を撮り始めて、しばらくして私がぶち当たったのは、気配というものだった。
気配がほしい、ここにさっきまで人がいた、これからまた人が来るかもしれない、そういう気配が欲しいと思ったとき、どうやって現わせばいいんだろう。
写真はそのものをあるがままに写し出す。撮り手さえ気づかぬ要素までもをありありと浮かび上がらせて、現実を写し出す。
でもたとえば、昼間大勢人通りのある通りを撮ろうと思ったとき、人がわんさかいるのをそのまま撮りたいとは思えなくて。かといって夜の閑散とした通りをそのまま撮るのも躊躇われて。私の撮りたいのは、その間をうろうろするような、通りの姿だったりして。
気配、風、雰囲気、そういったものが撮りたいと願う私にとって、それは大きな課題となった。乗り越えられそうにない、とてつもない大きな課題に。

もしこの世の中に、半透明な人間がいたとしたら。
私はその人にこそ、モデルになってもらっていたかもしれない。
いるのか、それともいないのか、輪郭の定かでない半透明人間。
でもやっぱりいる。いや、いないんじゃないか。
見る人に、そんなことを想像させながら見てもらえる写真。

私が撮りたい写真は、そんな写真。