2011年2月23日水曜日

ぺんぺん草

土の道が続いている。人の足によって草が踏みしだかれ、それが道となって、私たちのゆく手を照らす。

この辺りの道もずいぶん舗装されてきたが、この辺りはまだまだ、土の道だ。私たちは草履をつっかけながらぺたんぺたんと歩いてゆく。

道の両側から、道に覆いかぶさるかのように立つ樹木たち。下から見上げるとそれはまるで枝のアーチのようで。木漏れ日の中を私たちは歩いてゆく。

もう疲れた。そう言って娘がしゃがみこむ。
私は素知らぬふりをして、その辺の草をいじってみる。

ママ、何処まで行ったら森が終わるの?
さぁて、何処まで行ったら終わるんだろう?
なんかもう、飽きてきた。
そんな贅沢なこと言って。バチがあたるぞ。
なんで?
なんでって・・・普通こんなにたくさんの緑に囲まれたら、幸せだなぁって思うものだからだよ。
ふーん。でも私、飽きた。
ははは。まぁまぁ、ほら、ぺんぺん草があるよ。
何それ?

私はぺんぺん草のぺんぺんを、そっと一枚ずつ下ろしてゆく。そうして全部下ろし終えたものを、娘の耳元でくるくる回してやる。
ママ!今、ぺんぺんって鳴った!
そうだよ、だからぺんぺん草っていうんだよ。
へぇへぇぇ。おもしろいね。

娘はさっきまで飽きたと言っていたのをすっかり忘れたかのように、次々ぺんぺん草を拾い集め始めた。じじばばにも教えてやるんだと胸を張って。