2011年3月2日水曜日

白樺の原で

その森には所々、白樺が群生する場所があって。
私はその場所が、いっとう好きだったりする。

白い白い節くれだった幹。所々その樹皮が薄く剥けている。娘がそれをそおっと引っ張っては、薄皮を集めて回っている。
それ集めて何にするの? 秘密。ええー、教えてよ。まだ決めてない。あ、そうなのか。じゃぁなんで集めてるの? 綺麗だからに決まってるジャン! 娘はそう言ってにぃっと笑う。

この場所で白樺に出会うまで、私は白い樹皮を持つ樹があるなんて知らなかった。以来私はこの樹に魅せられている。
何といえばいいのだろう、どこか優しく、同時に厳しく、まっすぐに立つその姿が、私にはたまらなく凛々しく見える。
その凛々しさが、私に憧れに近いものを抱かせる。

そんな背の高い樹でもない。ほどほどの高さの樹。それでもその白い樹皮のせいだろう、ぱっと目に付く。
何処にいても。

ママ、これは白樺の赤ちゃん? どれ? これ。あぁ、そうだね、葉っぱの形がおんなじだ。ここに種が落ちて、今、芽吹いてきたんだよ。へぇっ! 樹も種で増えるの? そうだね、そうやって飛んでいって何処かに舞い降りて、根を張るんだよ。

娘が今度はどんぐり拾いに夢中になっている。私は何となく白樺の枝に手をかけ、少しだけ木登りしてみる。ぐいっと世界の高さが変わり、娘が小さく見える。

白樺よ、荒地にも根付くという強い白樺よ、私たちをどうか見守っていて欲しい。この子が大きくなるまで、どうぞ。