2011年8月30日火曜日

幻霧景Ⅰ-15

すうっと風が通り過ぎた後、ふと私は少女に近寄った。
彼女のアップを撮りたいと思ったからだ。
何も云わずカメラを構えたまま私は近づいてゆく。
鼻歌を歌いながら空を見上げていた少女が、私に気づいてじっとこちらを見つめて来る。
気づけば彼女は鼻歌を止めており。ただただこちらを、じっと見つめるのだった。

一瞬こちらが怯んでしまいそうなほど真っ直ぐな瞳。
それは澄み渡る空と同じように透明で。
いとおしかった。

東の空は明るく光溢れ。
さんざめく緑が風にさらさらと揺れている。