2011年11月14日月曜日

枝々の跡

そこは小さな小さな公園で。
鉄棒とブランコとちょっぴりの砂場があるだけの小さな公園で。
でも時間になると子供たちの集まる、公園だった。

そこの片隅に藤棚があって。季節になると美しい花を咲かせる。
花が咲いている最中というのはもちろん葉も茂っており、
その下に座っていると心地よい日陰に思わずとろんと目を閉じてしまいたくなるような、そんな風が吹くのだった。

そして季節は冬。
すっかり葉を落とした藤の枝は、一見枯れ枝かのように見えるほどからからに渇いており。触ると樹皮がかさこそと音を立てそうなほどで。
でも。
じっと見つめるほど、それは違うことに気づく。
小さな小さな萌芽が、あちこちに。

そして見上げれば。
すかんと晴れ渡る空。夏には見られないすかんと抜けるような青空。

冬が好きだ。
その冷たい風が好きだ。
その抜けるような高い空が好きだ。
誰もがじっと春を待つ、その沈黙が、たまらなく好きだ。