2013年6月13日木曜日

花迷子-4


私が言った人形のイメージと、彼女の抱く人形という言葉へのイメージは、かなりの隔たりがあった。恐らく彼女にとっての人形或いはぬいぐるみというのは、とてもあたたかな、そしてやわらかいイメージだろう。一方私が抱く人形という言葉に対するイメージは、まさに虚ろ、ひんやり、空洞、といったものだった。
でも私は事前に、この人形という言葉に対するイメージの差異について、敢えて触れることはしなかった。彼女が思うとおりにまず動いてもらおう、そう思った。

(「花迷子-5」へ続く)