2014年2月5日水曜日

にっと笑って



君の友達が リストカットをしていると知った時
君は友達からカッターナイフをとりあげた。
自分がカッターナイフを預かって、必死に止めにかかった。

それでも友達はやめてくれなくて
傷は増えるばかりで
その時初めて君は
私にぼそり言ってくれたね

ママ、私は役に立たない奴なのかな

違う
そう声を大にして言いたかったけれど
言うほどに君には嘘っぽく聴こえるような気がして
私は逆に にっと笑ってみせたんだった

役に立たない奴なんて
この世界どこを探したっていないんだよ
人という字を見てごらん
ひととひとが寄りかかりあって
できあがってるんだ
ひととひとは
そうやって支え合って存在してるんだ

本当はそんなこと言いたかったんだけど
言葉が下手な母は、ただ黙ってにっと笑っただけで

でも
君も にっと笑ってくれたんだったよね、あの時

そして

友達はうちに遊びに来るようになった
うちで泣いたり笑ったりするようになった

君は

私の知らないところできっとそうやって
いくつも痛んで傷を負って
そうして 成長してるんだって
教えられた気がしたよ